運動療法
筋肉の運動によって、食後の血糖の上昇を抑えエネルギーを消費します。また肥満を解消して、インスリンの作用を改善することが出来ます。運動が必要といわれると、突然慣れない運動や激しい運動を始める人がいますが、足腰を痛めたり、辛くなって長続きしません。生活の中に組み入れ、無理なく、安全に効果的に行うようにしましょう。
近くに行くのにも車を使ったり、エレベーターを頻繁に使っている方は、徒歩を心がけ、階段を上るように努めたいものです。食後に歩くのは最も良く、1日に合計1万歩が目標です。
しかし、強度の肥満がある方、心疾患や重症の高血圧、腎機能が著しく悪化している場合は、医師の許可なく運動をしてはかえって危険です!運動が糖尿病コントロールの全てでは有りません。食事療法をきちんと守った上での事です。
また、合併症の程度がひどい場合、とくに目の合併症がひどい方、血糖値が250mg/dl以上の時や尿ケトン体がでているときは、むしろ運動は禁忌になるので、あなたのかかりつけの医師に相談してください。
とにかく糖尿病は、自己管理が大切です!!
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糖尿病のコントロールが良くなる。血糖値が下がる。
運動により血糖値は下がります。また運動を続けることにより、インスリンの働く効率が良くなります。運動のエネルギー源は、血液中のブドウ糖や筋肉・肝臓に貯えられているグリコーゲンなのですが、運動によってそれらを使うことにより血糖値が下がります。また使ったグリコーゲンを補給するためにはインスリンが必要となり、その繰り返しでインスリンの働きも良くなるのです。
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体力の向上
運動を続けることにより、心臓や肺機能の向上はもちろん、筋力・筋持久力の増大が得られ体力が向上します。心臓・肺機能の向上とは、トレーニングを続けることで、同じ運動を行っても心拍数や呼吸数の上昇が抑えられ、「動悸」や「息切れ」がしなくなってくる事をいいます。
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体重の減少
食事療法のみによる体重の減少とは異なり、筋肉を失わずに体の余分な脂肪を減らすことができ、いわゆる体力を落とさずに減量できるのです。軽い運動を長く続けると、血液中の遊離脂肪酸(皮下脂肪のもと!!)が筋肉で利用されるため、体重が減少し血液中の脂肪も低下します。
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ストレスの解消
運動で汗をかくことはストレス解消になります。またストレスが解消されることで、インスリンの分泌も良くなると言われています。
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合併症の予防
定期的な運動をすることで、血糖値が改善され合併症が予防できます。また、高血圧が改善され動脈硬化が予防できるという報告もあります。
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骨粗しょう症の予防
とくに閉経期の女性に多く見られる骨粗しょう症の予防には、運動が有効です。
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糖尿病のコントロールが良くなる。血糖値が下がる。
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運動には、全身運動と局所(手のみ、足のみ)運動があり、糖尿病の方には前者が望ましいと言われています。しかし、「今まで運動が嫌いで、運動不足とわかっていても何もしなかったのに今さら運動なんて……」という方には、いきなり過度の運動は、かえって逆効果となってしまいます。
また後でも述べるように、ごく稀にしか行わない運動(例えば週1回のゴルフ)等では、運動の効果が期待できません。
そこで糖尿病運動療法の大前提はいつでも どこでも ひとりでも (…出来れば費用のかからないものを…)ということになるのです。
具体的な種目としては、歩く・ジョギング・体操・自転車・水泳・なわとび等が挙げられますが、どの運動も行う前後の準備運動や整理運動が重要になります。特に運動不足気味の方は、筋肉痛の予防や関節への負担を減らす配慮が必要となりますので、種目の選択には注意しましょう。
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血糖値は、食後30分~1時間ぐらいに最も高くなるといわれています。また食後すぐに安静にすると、血中に増加した糖は消費されず、脂肪となり肥満の原因となります。(食べてすぐ寝ると牛になるというのはここから来ているかも……?)
反対に、食事前の空腹での運動は低血糖発生の危険があり、特にインスリンを使用しているⅠ型糖尿病の方では、注意が必要です。以上をまとめると、
食後1~2時間が効果的!!運動単位が多い場合は2回に分けることが理想的です。※運動単位
食事療法で用いる単位と同じ1単位は80Kcalです。これは、三大栄養素各1gあたりのエネルギー量から換算しやすいように考えられています。
糖質・蛋白1g =4Kcal. 脂質1g =9Kcal
脂肪を効率よく消費し、筋肉内での糖の利用を促進するためには、運動は強すぎても弱すぎても効果は半減します。逆にあまりに激しい運動では、むしろ血糖値が上昇し、脂肪の利用が低下します。
運動の評価基準は心拍数で
運動を行う場合の評価基準の一つとして、最大酸素摂取量(vo2max)と言う考え方が有りますが、一般の方では、むしろ心拍数や脈拍を基準(運動時目標心拍数)にした方がわかりやすく簡単です。
※最大酸素摂取量(vo2max)運動をした時、体内に取り込める酸素の量のことで、一般的には体重1kgあたりに一分間に何mlの酸素を取り込めるかで表します(ml/kg/min)。一般的に中年の男性では、この量は35~40ml/kg/minとなりますが、マラソン選手では80ml/kg/minと倍くらいとなります。(つまり、普通の大人2人分の酸素を体に取り込めるので、2時間そこそこで42.195kmも走れるのです)。
心拍数の計算方法
心臓の能力は、残念ながら加齢と共に低下します。最も簡単な計算の仕方は、
220-年齢=年齢予想最大心拍数
となります。ですから満40歳の人の最大心拍数は、
220-40歳=180
で、年齢から予想される最大心拍数は1分間に180拍となります。運動の強さは、中・壮年者ではこの年齢予想最大心拍数の60~80%の範囲で行うと効果的です。また高・老年者では、40~60%の範囲で行うと効果的です。従って、40歳の人の運動時に効果的な心拍数の範囲は
180×60~80% = 180×0.6~180×0.8 = 108~144
の範囲での運動が効果的という事になります。
また60歳の人では、220 - 60歳 = 160(年齢予想最大心拍数)となり、効果的な運動時心拍数は、
160×40~60% = 160×0.4~160×0.6 = 64~96
の範囲での運動が、危険の少ない効果的な運動時心拍数の範囲となります。
運動時目標心拍数の求め方
運動時目標心拍数を求めるには、以下の手順で行ないます。
- 最大心拍数を求める
- 目標心拍数を求める(安静時心拍数、最大心拍数、運動強度より)
例えば、40歳で安静時心拍数が70回/分で、最大酸素摂取量の50%の運動を行ないたい場合、
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最大心拍数の計算
最大心拍数= 220 - 年齢なので、220 - 40 = 180[回/分]
従って、40歳での予測最大心拍数は180[回/分]となります。
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目標心拍数の計算
目標心拍数=(年齢予測心拍数 - 安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数
なので、さらに、運動強度が50%であるから、
(180 - 70)× 0.5 + 70 = 110[回/分]
となり、この方の場合は、110回/分が目標心拍数となります。
1日の運動量は、1日の消費カロリーの10~20%が目標ですが、徐々に増やしていけばよいでしょう。 具体例としては、45歳・70kgの事務職の方では、1日の摂取エネルギーが約2300kcalとなるので、1日の目標運動量は3単位程度(240kcal)となります。
1日200kcal程度から徐々に開始
以下の【運動交換表】を参考に!
運動の強さ 1単位あたりの時間 運動 エネルギー消費量
[kcal/kg/分]Ⅰ.非常に軽い 30分間ぐらい続けて1単位 散歩
乗り物(電車・バス立位)
炊事
家事(掃除洗濯)
一般事務
買い物
草むしり0.0464
0.0375
0.0481
0.0471~0.0499
0.0304
0.0481
0.0552Ⅱ.軽い 20分間ぐらい続けて1単位 歩行(70m/分)
入浴
階段(降りる)
雑巾がけ
ラジオ体操
自転車(平地)0.0623
0.0606
0.0658
0.0676
0.0552~0.1083
0.0658Ⅲ.中等度 10分間ぐらい続けて1単位 ジョギング(軽度)
階段(昇る)
自転車(坂道)
歩くスキー
スケート
バレーボール
登山0.1384
0.1349
0.1472
0.0782~0.1348
0.1437
0.1437
0.1048~0.1508Ⅳ.強い 5分間ぐらい続けて1単位 マラソン
なわとび
バスケットボール
水泳(平泳ぎ)
ラグビー(フォワード)
剣道0.2959
0.2667
0.2588
0.1968
0.2234
0.2125運動の主なエネルギー源である糖が燃えるまでには少し時間がかかり、短時間でやめてしまうと効果が少なくなります。運動のエネルギー源は、運動の時間によって変化します。短時間では筋肉中のグリコーゲン、中ぐらいの時間では血液中のブドウ糖(血糖)を分解するためにはある程度の時間を必要とし、最低15分以上、出来れば30分位の運動が最適となるのです。
1回の運動時間は、最低15分以上を目標に!運動不足気味の方は、まず運動の習慣をつける事が大切になります。先にも述べたように、週1回程度のゴルフでは治療としての運動とはなりません。運動による効果は、最大でも2~3日しか持続しないので、最低でも週3回以上の定期的な運動が必要となります。
最低2日に1度は運動を!◆運動当日のチェック(運動が勧められない場合)
- 熱がある
- 頭痛やめまいがする
- 身体がだるい
- 食欲がなく食事をしていない
- 睡眠不足
- 少し動いただけで息切れがしたり気分が悪くなる
- 顔や足にむくみがある
- 腹痛や下痢をしている
- 筋肉や関節に痛みがある
- 二日酔い
◆運動中のチェック(運動を中止する場合)
- 胸が痛い
- 胸が苦しい
- 動悸がしたり脈が乱れる
- 呼吸がしずらい
- 腹痛や吐き気がする
- 足や腰の痛みが強い
- めまい、目の前が暗くなる
- 顔色がわるい(顔面蒼白)